登山用語には聞き慣れない独特な用語がありますが、『森林限界』もそのひとつです。もしかしたら生物の授業で習った方もいらっしゃるかもしれません。 今回は登山用語でもある『森林限界』とはなにか、ご説明したいと思います。
高木が育てなくなるライン
まずは、森林限界(forest limit、tree line)について説明していきます。針葉樹林帯(亜高山帯)からハイマツなどの低木帯(高山帯)に変わる地点のこと、あるいは高木が育てなくなる限界高度のことを差します。 最暖月の平均気温が10℃の線に一致するともいわれています。こちらが森林限界と言われるものです。
森林限界はなにで決まる?
森林限界は温度や風、積雪などの影響で決定されるため、緯度が高くなるほど森林限界は低くなる傾向にあります。たとえば富士山や北アルプスでは標高2500メートルくらい、北海道の大雪山や日高山脈では1000~1500メートルくらいが森林限界になります。
ただし北向きか南向きか、雪崩の起きやすさ、土壌の性質などにより、同じ山域でも森林限界の高さが大きく異なる場合もあります。地域性や特性で変わってきます。
森林限界は目で見てわかる
日本では針葉樹林の広がる亜高山帯からハイマツなどの低木が広がる高山帯へ、ごく短い距離で木の種類と景観が一変するため、森林限界より上からは森林限界を簡単に目視できることがよくあります。
ただしハイマツは北東アジア特有の植物であるため、世界的にみると亜高山帯と同じ種類の木が、高度があがるにつれ疎林、低木化したりして、徐々に姿を消していきます。その場合森林限界を明確に確認することはできません。目視でわかるものと分からないものがあります。
まとめ
登山用語である森林限界は高木が育てなくなる限界高度のことを差す、と最初に説明しましたが、地球温暖化の影響で森林限界がどんどん上にあがっているという話もあります。たとえば富士山は、近年真冬でも雪が少なく、高度2400メートル付近までカラマツが迫り、3200メートル付近までオンダテという植物が黄色い花を咲かせているといいます。
現在2500メートルあたりと考えられている森林限界は、数年で数百メートル高くなると予想されています。 もしかすると、いまは山頂付近をジャリや岩で覆われている富士山が、一面緑の山となる日もくるかもしれません。その日が来るのを楽しみにしておきましょう。